悪魔の辞典

原題
The Devil's Dictionary
作者
アンブローズ・ビアス
作者(英語表記)
Ambrose Bierce
翻訳者
枯葉

S

SABBATH [安息日]

n. 週ごとに行われるフェスティバルで、その起源は神が世界を6日で創り、7日目に逮捕されたという事実からきている。ユダヤ人の間では戒律によってこの日の遵守が強いられているが、キリスト教においてはこの戒律はこうなる:「7日目には忘れることなく汝の隣人にそれを完全に守らせよ」。造物主にとって、安息日が週の終わりにくるのはふさわしくまた好都合にも思えたのであろうが、初期キリスト教の長老たちは違う見方をしていた。この聖なる1日はたいへんすばらしいものである。したがって、主が疑問と不安を抱いていたような、崇拝をもって迎えられるべき海に出(そして入る)人々ですら、下の第四戒律深海版を遵守している。

Six days shalt thou labor and do all thou art able,
And on the seventh holystone the deck and scrape the cable.

 甲板はもはや磨かれないが、ロープはまだその船の船長に、かの神聖な慣わしに対する宗教的な尊敬心を証明する機会を与えてくれている。

SACERDOTALIST [聖職尊重主義者]

n. 牧師は聖職者であるという信条を持つ人。この重大な主義の否定は、いまネオ・ディクショナリアンたちが監督制教会につきつける、もっとも手厳しい挑戦である。

SACRAMENT [サクラメント]

n. とある厳粛な宗教儀式のことで、それぞれに付与された権威度や知名度によって何種類かに分けられる。ローマには7種類のサクラメントがあったが、プロテスタントになると繁栄にもやや陰りが見え、2つぽっちのサクラメントでやっていけると思われているし、その神聖さも低く見られている。さらに小さな教派になると、サクラメントをまったくもたないものもある――その吝嗇な方針のせいで間違いなく地獄に落ちるであろう。

SACRED [聖なる]

adj. 宗教的な目標に専念している。神のような性格をしている。厳粛な思想や感情を閃いている。チベットのダライ=ラマのような。M'bwango の Moogum のような。セイロン島の猿の神殿のような。インドの牛のような。古代エジプトのクロコダイルやネコやタマネギのような。Moosh の Mufti のような。ノアを噛んだ犬の毛のような、などなど。

All things are either sacred or profane.
The former to ecclesiasts bring gain;
The latter to the devil appertain.
Dumbo Omohundro
SANDLOTTER [サンドロッター]

n. デニス・カーニーと政治的意見を一にする有脊椎哺乳動物。デニス・カーニーはサンフランシスコの悪名高いデマ煽動家であり、聴衆は街の空き地 (sandlots) に集まった。この動物の常の習性ではあるが、このプロレタリアのリーダーであった人物も、最終的に彼の法と秩序の敵に買収され、豊かに静かな余生を送り、金はあるが後悔のない死を迎えている。しかし彼は背信を犯す前に、無作法な言葉遣いによる罪の塊ともいうべき条約をカリフォルニアに残した。「サンドロッター」と「サンキュロット」はよく似た単語であり、そこに意義を見出すのは無理があるが、示唆に富んでいるのは疑いない。

SAFETY-CLUTCH [安全装置]

n. 巻上機に万一アクシデントが生じたとき、エレベーターというかケージの落下を防止するために自動的に機能するメカニカルデバイス。

Once I seen a human ruin
  In an elevator-well,
And his members was bestrewin'
  All the place where he had fell.

And I says, apostrophisin'
  That uncommon woful wreck:
"Your position's so surprisin'
  That I tremble for your neck!"

Then that ruin, smilin' sadly
  And impressive, up and spoke:
"Well, I wouldn't tremble badly,
  For it's been a fortnight broke."

Then, for further comprehension
  Of his attitude, he begs
I will focus my attention
  On his various arms and legs --

How they all are contumacious;
  Where they each, respective, lie;
How one trotter proves ungracious,
  T'other one an alibi.

These particulars is mentioned
  For to show his dismal state,
Which I wasn't first intentioned
  To specifical relate.

None is worser to be dreaded
  That I ever have heard tell
Than the gent's who there was spreaded
  In that elevator-well.

Now this tale is allegoric --
  It is figurative all,
For the well is metaphoric
  And the feller didn't fall.

I opine it isn't moral
  For a writer-man to cheat,
And despise to wear a laurel
  As was gotten by deceit.

For 'tis Politics intended
  By the elevator, mind,
It will boost a person splendid
  If his talent is the kind.

Col. Bryan had the talent
  (For the busted man is him)
And it shot him up right gallant
  Till his head begun to swim.

Then the rope it broke above him
  And he painful come to earth
Where there's nobody to love him
  For his detrimented worth.

Though he's livin' none would know him,
  Or at leastwise not as such.
Moral of this woful poem:
  Frequent oil your safety-clutch.
Porfer Poog
SAINT [聖人]

n. 改訂・編集済みの死せる罪人。

オルレアン公爵夫人の話では、礼儀知らずの老誹謗家ヴィルロワ元帥は、若い頃に聖フランソワ・ド・サールと面識があったらしく、彼が聖人と呼ばれているのを聞くに及んでこう言ったのだそうな。「ド・サール氏が聖人だと聞いてうれしいよ。彼は口が悪くて、カードでもイカサマをやっていたものだ。他の面では完璧な紳士だったよ。たとえバカではあってもね」

SALACITY [猥褻]

n. 大衆文学によく見られる文学的特性。とくに、女流作家および小娘の書き物によく見られる。彼女たちは、これにまたべつの名前をつけ、お披露目の際には自分たちは文学で無視されてきたフィールドを占有し、見落とされた収穫を刈り取っているのだと考える。もしも彼女らが不運にも長生きしてしまったら、その収穫を束にして焼き払ってしまいたいという欲求に駈られることだろう。

SALAMANDER [サラマンダー]

n. 元々は、火の中に住んでいた爬虫類のこと。後に、不死性擬人体となったが、それもまた好炎性を持っていた。サラマンダーは今では絶滅したと考えられており、記録としては、カルカソンヌでベロー神父に目撃されたものが最後の一体とみなされている。神父はそいつをバケツ一杯の聖水で祓い清めたそうな。

SARCOPHAGUS [棺]

n. 肉食性の石材でつくられたギリシャの棺で、中に安置された死体を貪り食う特性がある。現代の葬儀業者に知られている棺はふつう大工の技による品。

SATAN [サタン]

n. 造物主の非難されるべき過ちのひとつで、たすき (sashcloth) をかけ斧 (axe) を手に悔やまれている*。かつて天使長の位にあったサタンは、さまざまな点で堕落し、ついに天国から追放されることになった。だが地獄に行く途中でサタンは立ち止まり、しばらく首をかしげて考えこんでいたが、やがて逆戻りしはじめた。「お願いしたいことがひとつあるのですが」と、サタンは言った。

「言ってみよ」

「聞くところによりますと、人が創られようとしているのだそうで。人は法を必要とすることでしょう」

「なんだと、悪党め! 人の敵たる定めの身でありながら、永遠の夜明けから人の魂への憎悪を植えつけられた身でありながら――それでもなお、人の法を定める権利を欲するというのか?」

「お赦しを、ですが私がお願いしたいのは、人に人の法を作らせるようにしていただきたいということでして」

そのように定められたのであった。

*「マタイによる福音書」11:21――「あら布(sackcloth)と灰(ashes)の中で悔い改めていただろう」。電網聖書参照のこと。

SATIETY [倦怠]

n. 中身を食べてしまった皿に対してもつ感情のことですよ、奥さま。

SATIRE [諷刺]

n. 思いやりを欠いた調子で書き手の敵の悪徳と愚行を暴露する、今はすたれた作文の一種。諷刺は、この国ではまともに評価されたためしがないが、それは、諷刺の真髄がウィットであるにもかかわらず、我々はウィットに乏しいばかりかユーモアをウィットと勘違いしており、そのユーモアは、ことごとくといってもよいほど寛大で同情心にみちているからだ。しかも、我々アメリカ人はあふれんばかりの悪徳と愚かさを「造物主から授けられている」というのに、一般的にはそれが唾棄すべき性質のものであるとみなされておらず、そのせいで、諷刺作家は心の歪んだ悪人であると広く考えられており、彼の対象にされてきた被害者たちが多重被告を求めてあげる叫び声は全国的な賛意を勝ち取るのだ。

Hail Satire! be thy praises ever sung
In the dead language of a mummy's tongue,
For thou thyself art dead, and damned as well --
Thy spirit (usefully employed) in Hell.
Had it been such as consecrates the Bible
Thou hadst not perished by the law of libel.
Barney Stims
SATYR [サテュロス]

n. 数少ない、ヘブライ人に認識されているギリシャ神話の登場人物(レビ記17:7)。はじめはディオニューソスにだらしなく仕える放蕩なコミュニティのメンバーとして登場するサテュロスだが、多くの改変と改善がほどこされていった。稀ならず混同される存在として、後代にローマ神話がやや善良な存在として創作したファウヌスがあり、こちらは人よりもヤギに近い風体をしている。

SAUCE [ソース]

n. 文明開化にお墨付きをあたえるもののひとつ。ソースを持たない人々は千の悪徳を持っており、ソース1つを持つ人々は999の悪徳を持っている。というのは、ソースがひとつ開発され普及するたびに、悪徳がひとつ否定され赦免されるからだ。

SAW [ことわざ・鋸]

n. 手垢のついた言い回しのこと。(砕けた表現による比喩。) saw と言われるのは、木偶頭にも使えるからだ。以下に刃をたてなおした saw の例を挙げる。

A penny saved is a penny to squander.
一銭の節約は一銭の浪費。
A penny saved is a penny earned. 「一銭の節約は一銭の儲け」

A man is known by the company that he organizes.
人柄は作った会社で知れる。
A man is known by the company that he keeps.「人柄は付きあう仲間で知れる」

A bad workman quarrels with the man who calls him that.
下手は指摘にケチをつける。
A bad workman quarrels with his tool. 「下手は道具にケチをつける」

Better late than before anybody has invited you.
遅くとも、呼ばれもせぬのに押しかけるよりまし。
Better late than never. 「遅くともやらぬよりまし」

Example is better than following it.
実例は論証にまさる。
Example is better than precept. 「実例は教訓にまさる」

Half a loaf is better than a whole one if there is much else.
パン半分でもパン一個よりまし、他がたくさんあれば。
Half a loaf is better than nothing. 「パン半分でもないよりまし」

Think twice before you speak to a friend in need.
困窮の友と喋る前には二度考えよ。

What is worth doing is worth the trouble of asking somebody to do it.
苦労は乞うてでもやらせよ。
What is worth doing at all is worth doing well.
「いやしくもするに足ることは立派にやり遂げる価値がある」

Least said is soonest disavowed.
寡黙なれば飽きられるも容易。
Least said is soonest mended. 「寡黙なれば改めるも容易」

He laughs best who laughs least.
慎ましく笑う者こそ笑上戸。
He laughs best who laughs last. 「最後に笑う者こそ勝者」

Speak of the Devil and he will hear about it.
噂をすれば耳。
Speak of the Devil and he will appear. 「噂をすれば影」

Of two evils choose to be the least.
悪事と悪事から最低なほうを採れ。
Of two evils choose to be the better. 「悪事と悪事からましなほうを採れ」

Strike while your employer has a big contract.
ストライキは社が命運を賭けているうちにやれ。
Strike while iron is hot. 「鉄は熱いうちに打て」

Where there's a will there's a won't.
意思あるところに嫌!あり。
Where there's a will there's a way. 「意思あるところに道あり」

SCARABAEUS [スカラベ]

n. 古代エジプトの聖なる甲虫で、我々にもおなじみの「コガネムシ」と同類にあたる。不死のシンボルとされ、事実、神もまたそれに格別な神聖さを与えるだけの何かを知っていたのだ。糞の塊で孵化するというその習性もまた、聖職者の好みに訴えるところがあったであろうし、いつの日にか、我々の間でも同様の尊敬を集めうるかもしれない。なるほど、アメリカの甲虫は下等甲虫であるが、アメリカの聖職者もまた下等聖職者なのだから。

SCARABEE

n. SCARABAEUS に同じ。

      He fell by his own hand
        Beneath the great oak tree.
      He'd traveled in a foreign land.
      He tried to make her understand
      The dance that's called the Saraband,
        But he called it Scarabee.
He had called it so through an afternoon,
  And she, the light of his harem if so might be,
  Had smiled and said naught. O the body was fair to see,
All frosted there in the shine o' the moon --
          Dead for a Scarabee
And a recollection that came too late.
            O Fate!
        They buried him where he lay,
        He sleeps awaiting the Day,
            In state,
And two Possible Puns, moon-eyed and wan,
Gloom over the grave and then move on.
          Dead for a Scarabee!
Fernando Tapple
SCARIFICATION [乱刺]

n. 中世の信徒が行った苦行の一形態。この儀式は、ときにナイフで、ときには焼きごてで執り行われたが、アルセニウス・アセンティカスによれば、難なく受け入れられたのだそうだ――いつだって行者が苦痛や実害のない畸形化から自己を脱却できてさえいれば。乱刺は、他の粗暴な苦行とともに、慈善にとって代えられている。ひとたび図書館を設立したり大学に寄付したりすると、ナイフや焼きごてよりも鋭く長持ちする苦痛を感じる苦行になり、そのため、より確実な祝福を得られるのだそうな。しかしながら、これを苦行法とするには2つ重大な問題がある。ひとつ、それがなす善。ふたつ、正義の痕跡。

SCEPTER [王杓]

n. 王が役職上手にする杖で、その権威のシンボル。そもそもは、道化師を叱りつけたり、大臣の提案をはねつけたりすべく、そのアイデア主の骨を折るために使われた杓杖

SCIMITAR [半月刀]

n. きわめて鋭利な湾曲した剣。驚くほど扱いに長じた東洋人が振るった場合どうなるか、その一例を以下に語り記そう。板間酒子という、13世紀の有名なもの書きの作品を日本語から翻訳した物語である。

吉括帝の御代のこと、帝は李児爺という宮廷にお仕え申し上げ給う身分の高い大臣の死刑を執り行うようお命じになった。やがて執行時間の直後、御簾にいざりよるものがいた。ご覧になると、驚きあきれ給うたことに、時すでに死んだはずの大臣であった。

帝があえぎあえぎ仰ることには「我慢ならぬ千と七百の龍どもめ! 未の三つに市中にておまえの首を刎ねるよう命じたはずであったのに。まだ未の三つ過ぎではないのであろうか。いや、そんなはずはない」と。
「万の神の御子におわします帝よ」と大臣はお叱りにお答えしなさった。「仰せのことあまりに真実にございますれば、事実が嘘に思えたてまつるほどにございます。なれど、天なる帝の太陽のごとくしてかつ生命の根源たる願いは、非道このうえなきことにもたがえられたのでございます。臣はこの価値なき身を喜んで市中におさらししました。そこに抜き身の刀を手にした侍が現れ、これみよがしに刀を振り回しましたのち、臣の首の付け根を軽く叩き、見物人から石を投げられつつ、というのは臣めが彼らから好かれておりましたからにございますが、侍は大股でずんずんと去っていったのでございます。臣がいまここに参上いたしましたのは、かの不敬なる無本人の首に、どうかお裁きをこいねがうためにございます」

「その薄汚い卑怯者は第何組の斬首番についておる者か?」と帝はお尋ねになった。

「千八百三十七組に――臣はその男を知っております。武蔵左京と申す者にございます」

「そやつを連れて参れ」と帝は、側役のひとりにお命じになった。四分の一刻ほどすると、罪人が御前に参上した。

「四本指かつ三本足のせむしの汚らわしき孺子め!」帝は怒号し給うた――「いかなる故ありて叩ききるべき首を軽く叩いたのみにすませたのだ?」

「乱れ桜の鶴の王たる帝よ」と侍は平然としてお答えした。「大臣に手鼻をおかみになるようご命令くださいませ」

ご命令が下り、李児爺はおつまみになった鼻を象のようにおかみになった。居並ぶものみな、その瞬間に首が激しくうち飛んでゆくのであろうと期待した。だがなにも起こらなかった。茶番劇はつつがなく幕を閉じた。

みなの視線が侍に向けられた。侍は富士の高嶺の雪のごとく蒼白になっていた。膝をうちふるわせ、恐れおののいて意味を詰まらせた。

「幾種かの棘尾を生やした真鍮の獅子よ!」と叫び申し上げるには「臣の剣はもはやさびつき、失われたようにございます。臣が咎めだてられた大臣を力なくおうちしましたのも、刀を閃かせた折、ふとしたはずみに己が首を切ってしまったからにございます。月の父よ、この職より身を引かせていただきたく存じます」と。

そして、自分の髻をむんずとつかんだこの侍は御簾にいざりより、そのたもとに、持ち上げた首を恭しく置き捨て申し上げたということだ。

SCRAP-BOOK [スクラップブック]

n. ほとんどはバカに編集された本のこと。たいして名もない人々は、偶然見つけた自分について書かれたものや、他人を使って集めたものをスクラップブックにまとめあげる。こうしたエゴイストのひとりは、アガメムノン・メランクソン・ピーターズによって、以下のように歌われている。

Dear Frank, that scrap-book where you boast
    You keep a record true
Of every kind of peppered roast
        That's made of you;

Wherein you paste the printed gibes
    That revel round your name,
Thinking the laughter of the scribes
        Attests your fame;

Where all the pictures you arrange
    That comic pencils trace --
Your funny figure and your strange
        Semitic face --

Pray lend it me. Wit I have not,
    Nor art, but there I'll list
The daily drubbings you'd have got
        Had God a fist.
SCRIBBLER [乱筆家]

n. 自分自身の見解と一致しない見解を文章にする職業的もの書き。

SCRIPTURES [聖書]

n. 我々の神聖なる宗教の聖なる本。他の信仰の基礎となっている他のあらゆる冒涜的な偽物とは異なる。

SEAL [印・アザラシ]

n. 名義と出典を証明するものとしてある種の書類に押されるマーク。蝋で封をするさい、蝋の上に押されることもあれば、紙のほうに直接押されることもある。この行為は、その書類を作成した人物の独立した権威を表すのに魔法的な効果を持っていた神秘的なことばやしるしを紙に記すという、古代の習慣が生き残ったものである。大英博物館で保管されている大量の古文書はだいたいが宗教的な性格を持つものだが、呪術的な五芒星やその他のアイデア(よくあるのは呪文のイニシャル)で認証されており、また多くの件で、こうしたものが今日押印をするのと同じようなやり方でつけられている。根拠もなければ見たところ意義もないような現代の習慣・儀式・義務のほとんどすべては、遠くはそれなりに実益のあるものだったのだ。時代の経過にしたがって古代のナンセンスが何か本当に役立つものに変わるプロセスをひとつ、喜んで例に挙げよう。我々が言う "sincere"(誠実な)という言葉は、"sine cero" に由来する。意味は "without wax" だ。けれども、これが呪術的な言葉の欠落をいうのか、それとも内容が他人に見られることのないよう手紙に封をするのに使われた蝋の欠落をさすのか、学識者たちの間でも意見の相違がある。どちらの意見も、とっさに仮説を出せと言われたときには役に立つであろう。L. S. というイニシャルはたいてい法律文書の署名欄にでてくるもので、意味は locum sigillis、つまり seal のための場所である。印などもう使ってないのだけれども。これは、人間と絶滅の危機にある動物との違いをなす保守性のみごとな一例だ。プリビロフ諸島(訳者注:アザラシの代表的な生息地。禁猟指定された。)が合衆国独立州となった暁には、この locum sigillis という言葉こそふさわしいモットーではなかろうかと、ひそかに囁かれている。

SEINE [地引網]

n. いつのまにか環境を変えてしまう、一種の網。魚用のものは粗いロープで頑丈に作られるが、女用のものは、恐ろしく華奢な布に、カットされた小石を重り代わりにちりばめるだけでよい。

The devil casting a seine of lace,
    (With precious stones 'twas weighted)
Drew it into the landing place
    And its contents calculated.

All souls of women were in that sack --
    A draft miraculous, precious!
But ere he could throw it across his back
    They'd all escaped through the meshes.
Baruch de Loppis
SELF-ESTEEM [自尊]

n. 誤った評価。

SELF-EVIDENT [自明の]

adj. 自分の目には明らかだが、他人の目には明らかでない。

SELFISH [わがままな]

adj. 他人のわがままに対する思いやりが欠けている。

SENATE [上院]

n. 重責と軽犯罪を問われる老紳士たちの集まり。

SERIAL [連載]

n. 文芸活動の一種。通常は、真実でない物語のこと。新聞や雑誌の上を数回に分けてのろのろ進む。多くの場合、初めて読む人たちのための「これまでのあらすじ」が毎回毎回添えられるのだが、もっと切実に求められているのは、その先々を読むつもりがない人たちのためにこれからのあらすじを用意することだ。全体のあらすじがあればいっそうよいと思われる。

今は亡きジェイムズ F. ボーマンは、ある週刊紙で連載小説を共同執筆していた。この天才的な共同執筆者の名前は今に残されていない。彼らは、一緒に書いたわけではなく、交互に、ボーマンがある週の分を書いたら、かの友人が次回の分を書き、といった具合で、できれば果てしなく続けていくつもりだった。不運なことにかれらは仲たがいをした。ある月曜日のこと、ボーマンが、自分の仕事に取りかかろうとその新聞を読んでみると、もはやかれの仕事は残されていなかった。そのやり方はボーマンを驚かせ、また傷つけた。物語の登場人物をみな一艘の船に乗せた共同執筆者は、まとめて大西洋のもっとも深いところに沈めてしまったのだ。

SEVERALTY [個別性]

n. 個々別々であること。たとえば、単独所有の土地 (lands in severalty) とは、個人的に所有されており、共同で所有されているわけではない土地のことをいう。ある種のインディアンの部族はいま、土地を単独所有するくらいには文明的になったと信じられている。かつてかれらは、部族で組織的に土地を所有していたため、白人にビーズやジャガイモのウイスキーと交換に売り渡すことができなかったのだ。

Lo! the poor Indian whose unsuited mind
Saw death before, hell and the grave behind;
Whom thrifty settler ne'er besought to stay --
His small belongings their appointed prey;
Whom Dispossession, with alluring wile,
Persuaded elsewhere every little while!
His fire unquenched and his undying worm
By "land in severalty" (charming term!)
Are cooled and killed, respectively, at last,
And he to his new holding anchored fast!
SHERIFF [保安官]

n. アメリカでは地方の行政官のことで、そのもっとも特徴的な職務は、一部の西部および南部にかぎった話だけれども、悪漢を捕らえてしばり首にすること。

John Elmer Pettibone Cajee
(I write of him with little glee)
Was just as bad as he could be.

'Twas frequently remarked:  "I swon!
The sun has never looked upon
So bad a man as Neighbor John."

A sinner through and through, he had
This added fault:  it made him mad
To know another man was bad.

In such a case he thought it right
To rise at any hour of night
And quench that wicked person's light.

Despite the town's entreaties, he
Would hale him to the nearest tree
And leave him swinging wide and free.

Or sometimes, if the humor came,
A luckless wight's reluctant frame
Was given to the cheerful flame.

While it was turning nice and brown,
All unconcerned John met the frown
Of that austere and righteous town.

"How sad," his neighbors said, "that he
So scornful of the law should be --
An anar c, h, i, s, t."

(That is the way that they preferred
To utter the abhorrent word,
So strong the aversion that it stirred.)

"Resolved," they said, continuing,
"That Badman John must cease this thing
Of having his unlawful fling.

"Now, by these sacred relics" -- here
Each man had out a souvenir
Got at a lynching yesteryear --

"By these we swear he shall forsake
His ways, nor cause our hearts to ache
By sins of rope and torch and stake.

"We'll tie his red right hand until
He'll have small freedom to fulfil
The mandates of his lawless will."

So, in convention then and there,
They named him Sheriff.  The affair
Was opened, it is said, with prayer.
J. Milton Sloluck
SIREN [サイレン]

n. 音楽的天才のひとりで、オデュッセウスに海上での生活をやめるように訴えた、その無駄な試みで有名。比喩的には、仰々しい約束をし、性根を隠し、いざパフォーマンスとなるとがっかりさせてくれるような女なら誰でも。

SLANG [スラング]

n. 音に対する記憶力をもつ人間豚 (Pignoramus intolerabilis) のぶうぶう語。耳で考えたことを舌から漏らす人や、オウム芸を磨くのにクリエイターの誇りを感じる人の言葉。センスの元手なしに機知をはく(神慮のもとでの)方法。

SMITHAREEN [破片]

n. かけら。脱落部分。残骸。この単語はさまざまに用いられるが、以下に挙げる詩は、女性による自転車運転に「悪魔のもとに導く」ものだと言って反対した女性改革者を詩ったものだが、ここでの使い方がいちばん優れているように思われる。

The wheels go round without a sound --
  The maidens hold high revel;
In sinful mood, insanely gay,
True spinsters spin adown the way
  From duty to the devil!
They laugh, they sing, and -- ting-a-ling!
  Their bells go all the morning;
Their lanterns bright bestar the night
  Pedestrians a-warning.
With lifted hands Miss Charlotte stands,
  Good-Lording and O-mying,
Her rheumatism forgotten quite,
  Her fat with anger frying.
She blocks the path that leads to wrath,
  Jack Satan's power defying.
The wheels go round without a sound
  The lights burn red and blue and green.
What's this that's found upon the ground?
  Poor Charlotte Smith's a smithareen!
John William Yope
SOPHISTRY [詭弁]

n. 敵対者の論戦術。不誠実さや愚弄の巧さで優れているあたりで当人の論戦術と一線を画す。この手法は、後期のソフィストたちのものであり、ソフィストとは英知や分別や学問や芸術などなど要するに人が知るべきものごとを教えるために起こった学派の哲学者であるが、やがてかれらは、言葉遊びの迷路や言葉の霧の中で自己を見失ったのであった。

His bad opponent's "facts" he sweeps away,
And drags his sophistry to light of day;
Then swears they're pushed to madness who resort
To falsehood of so desperate a sort.
Not so; like sods upon a dead man's breast,
He lies most lightly who the least is pressed.
Polydore Smith
SORCERY [魔術]

n. 政治的影響力の古代における雛型であり前駆者。しかしながら、こちらはあまり敬意を払われず、ときには拷問や死刑で罰せられることもあった。オーガスティーン・ニコラスの話によると、魔術を用いたという疑いをかけられた一人の農夫が、拷問によって自白を強要されたことがあったのだそうだ。たいしたことのない苦悶の後、自分の罪を認めたこの農夫は、知らない間に魔術師になることがありえるのか、と恐る恐る拷問役人に質問したらしい。

SOUL [魂]

n. 今まで行われてきた熱心な議論に関係をもつ霊的存在。プラトンに言わせれば、実在の前段階(アテネ時代より前)でいちばんはっきりと普遍の真理をかいま見た魂たちが入りこんだ肉体こそ哲学者になる。プラトンその人は哲学者だった。また、神聖なる真理を無視しきった魂が動かす肉体は簒奪者や暴君となる。ディオニシス1という、かの額の広い哲学者を脅して斬首しようとした人物は、簒奪者であり暴君でもあった。この哲学体系はプラトンの敵に対して有利に引用できるものだが、かといって、プラトンがこういう真似をした最初の哲学者というわけではない。そして、最後でもない。

「魂の性質について」と、Diversiones Sanctrorum を著したあの有名な著述家は言う。「それが肉体のどこにあるのか、ということほど激しく議論されてきたものはない。私の信じるところでは、魂は腹部に存在しているのだ――こうしてみると、あのこれまでの我々が理解に苦しんできた真実を解釈し、認識できるようになるであろう。つまり、大食漢ほど信心深いという真実をだ。聖書にいわく、『みずからの腹を神とする者』――そう、信じる神を自らの肉体の中にやどしているかれが、信心深くないはずがあるまい? かれが祭司を務めるものの力や威厳について、かれ以上に知りうるものがいようか? まったく真面目な話、魂と胃はひとつの『神性存在』なのだ。プロマシウスもそう信じていたのだが、かれは、それがいずれほろぶものだと断言しているあたりでまちがっている。死後、目に見える物質的なものが肉体とともに朽ち果てていくのはかれも見て取っていたのだけれども、その非物質的な本質についてはまったく何も分かっていなかったのだ。いわゆる『食欲』である。それは万物の定めである崩壊と腐敗を切りぬけ、もうひとつの世界で、肉体に収まっていたころに求めてきたものに応じた報いを受ける。一般市場や大衆食堂で不健康な食品をひたすらに摂取していた『食欲』は永遠の飢饉に投げ込まれるであろうし、逆に、断固として文明的に、ズアシホホジロやキャビアやテラピンやアンチョビやフォアグラパイなどありとあらゆるキリスト教徒の食料を求めてきたのであれば、その魂を霊的な歯でいつまでもいつまでもかみしめることができ、また下界ではけっして痛飲できないもっとも希少で豊潤なワインの不滅なる部分で神性の渇きを癒すことだろう。以上が私の信念である。たとえ、悲しいかな、ローマ法皇猊下もカンタベリー大司教猊下(ともに私が心から尊敬する方々である)もこの説の宣伝に同意してくださらないのを告白せざるをえないとしてもだ」

SPOOKER [怪奇作家]

n. もの書きの一種。その想像力をもって、自身の想像力と超自然現象、特に幽霊の行動とを結びつける。当代でもっとも優れた怪奇作家のひとりであるウィリアム D. ハウエルズ氏は、お人よしの読者にこれ以上ないと思えるほど礼儀正しい立派な幽霊たちを紹介してくれる。かれが書く幽霊には、地方学校評議会議長が備える恐怖に加え、よその土地からきた農夫にみられるようなちょっとした神秘性を持ち合わせている。

STORY [物語]

n. 通常は真実でない物語。だが、以下に挙げる物語の信憑性については、いまのところうまく問題にできた人はいない。

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ある晩餐の席で、ニューヨークのルドルフ・ブロック氏は、隣に座っているのが有名な批評家パーシヴァル・ポラード氏であることに気付いた。

「ミスター・ポラード、私の本、『死せる牛の伝記』は匿名で出版したんだが、だれが書いたんだか、君が知らなかったはずはない。なのに、書評で君は世紀の白痴の作品だなんて言っている。これがフェアな書評だと思うのか?」

「それは本当に申し訳ないことをしました」と批評家は感じよく返答した。「あれを誰が書いたのか、あなたも大衆に知ってもらいたがってるんだと思ってましたもので」

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W. C. モロウ氏は、かつてカリフォルニア州サンノゼに住んでいた人だが、読み手に氷から這い出してきたばかりのトカゲの行列が背筋を這いあがっていくような感じを与える幽霊話を次々と書いていた。そのころのサンノゼは、有名な山賊であるヴァスクェスの幽霊が目に見える形でうろついていると信じられていた。ヴァスクェスはかの地で縛り首にされたためである。街の照明も十分でなく、サンノゼでは夜間外出などもってのほか、と囁かれていた。とりわけ暗かったある晩のこと、2人の紳士がこの待ちでもいちばんさびれた地区を歩いていた。恐さを紛らわすために大声で喋りながら。そこに、名の知れたジャーナリスト J. J. オーウェンがやってきた。

「あれ、オーウェン」と片方が言った。「なんでまたこんな夜にこんなところにきたんだい? ヴァスクェスの幽霊がこのへんによく出るって言ったのは君じゃないか! それに、君もそれを信じてんだろ? 外に出たりして恐くない?」

「ねえきみ」とジャーナリストは、枯葉を舞わせる秋風のすすり泣きにも似た、沈鬱な抑揚で答えた。「うちにいるのが恐いんだよ。ウィル・モロウの小説が一冊ポケットに入っててさ、文字を読めるくらい明るい場所に行く勇気がないんだ」

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シュリー提督とチャールズ F. ジョイ下院議員がワシントンの平和記念塔の近くに立って、成功とは失敗であるか?というテーマで議論をしていた。ジョイ議員はとつぜん長ったらしい演説の途中で口をつぐみ、叫んだ。「お! あのバンドは前にも聞いたことがある。サントルマンのだな、たぶん」

「バンドなんて聞こえないが」とシュリー。

「そういえば、聞こえないな」とジョイ。「けれども、マイルズ将軍があの通りをやってくるのが見える。あの行列を見るといつもブラスバンドとそっくりな感じがするのだ。印象というものはしっかり吟味してみにゃならん。でないと、その原因を見失ってしまいかねんからな」

提督がこの短絡的な哲学を消化しようとしているうちに、マイルズ将軍は威風堂々と視界から消えていった。行進の最後尾が通りすぎたとき、2人の観察者はその輝きから生じた一時的な盲目からたちなおった――

「将軍はご機嫌なごようすでしたな」と提督。

「あの人にとって」とジョイは思慮深げに答えた。「ほかの楽しみなどあれの半分にもなりはしないのでしょうな」

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 チャム・クラークという大政治家は、昔、ミズーリ州のジュビーグ村から1マイルのところに住んでいた。ある日彼は、お気に入りのロバに乗って村の門をくぐり、酒場の正面、日の照りつけるところにラバをつなぐと、絶対禁酒主義者として中に入り、酒は嘲る者だと、主人に通知した。おそろしく暑い日だった。まもなくやってきた近所の男が、クラークを見るなりこう言った。

「チャム、ラバを炎天下に放置するのはまずいよ。焼肉になっちまうぜ! ――オレがそばを通ったときはもくもく煙をあげはじめてたよ」

「ああ、あいつは大丈夫」と、クラークは軽く言ってのけた。「手のつけられないヘビースモーカーだからね、あいつは」

近所の男はレモネードを注文し、首をふりながらあれはまずいと繰り返した。

男は共謀者だった。昨晩火事があり、角のところに馬小屋が炎上して数多くの馬たちが命を落としたのだが、その中にいた1頭の子馬もこんがりと焼け死んでしまっていた。何人かの子供たちは、クラーク氏のラバを放すと、代わりに子馬の焼死体を置いた。そこに別の男が酒場に入ってきた。

「なあ頼むから!」男はレモネードに砂糖を入れながら言った。「あのラバ、どっかにやっちまってくれよ、ご主人。ひでえにおいだぜ」

「あのラバは」とクラークが口を挟んで、「ミズーリでいちばん鼻の効くやつなんだよ。あいつが気にしてないんだから、あんたも気にするこたあない」

人間的やりとりを一通りすませたクラーク氏が外に出ると、そこには彼の馬のなれはてが横たわっていた。だが、少年たちはまったくクラーク氏をからかうのに失敗してしまった。なぜならクラーク氏、それを見ると、彼の政治力の所以たるどっちつかずの意を表しただけで、そのまま行ってしまったからだ。だがそれから家に帰る途中、道端に、彼のラバが月明かりを浴びて立っているのを目の当たりにした。上ずった声でヘレン・ブレイズの名を唱えると、クラーク氏は猛スピードできた道を引き帰し、その晩は村で過ごしたのであった。

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陸軍士官学校長の H. H. ウォザースプーン将軍はヒヒを一匹ペットにしていた。このヒヒは、頭は良いものの、決して美しいとは言えなかった。ある晩、部屋にもどった将軍は、アダム(将軍はダーウィン学説の支持者であったのでこういう名前をつけていた)が、将軍のいちばんいい軍服を、肩章やらなにやらまでそろえて椅子に座っているのを見つけ、びっくりするとともに腹を立てた。「バカな遠い祖先めが!」と怒鳴る。「消灯ラッパのあとまで起きているとはいったいどういうつもりだ?――しかもわしの服を着て!」

アダムは立ちあがると、非難がましい目つきをして、その同類と同じ四足歩行で部屋を横切り、テーブルの上から一枚の名詞をとりあげて主人のもとにもどってきた。バリー将軍が訪ねてきていたのだ。空になっているシャンペンのボトルや、葉巻のすいさしから判断して、客はけっこう快適にもてなされたらしい。ウォザースプーン将軍はこの忠実な人間の祖先に詫びると、寝室にさがった。翌日、彼に出会ったバリー将軍が言った。

「やあスプーン。昨日お暇するときにあのすばらしい葉巻のことを聞くのを忘れておった。あれはいったいどこで手に入れたのだね?」

ウォザースプーン将軍は返事もせずに足を速めた。

「いやいや許してくれ」とバリー将軍が追いすがって言う。「もちろん冗談だよ。なに、部屋に入ってから15分もしないうちに君じゃないとわかっとったのだ」

SUCCESS [成功]

n. 同僚にとっては赦すまじき罪。文学と一部の詩壇にかぎれば、成功の秘訣はきわめてシンプル。ガッサラスカ・ジェイプ神父による次の詩文の中でみごとに説明されている。タイトルは、何か理由があってのことか、「ジョン・A・ジョイス」とされている。

The bard who would prosper must carry a book,
  Do his thinking in prose and wear
A crimson cravat, a far-away look
  And a head of hexameter hair.
Be thin in your thought and your body'll be fat;
If you wear your hair long you needn't your hat.
SUFFRAGE [投票]

n. 投票による意見表示。投票権とは(権利とも義務ともされる)つまり、一般的な解釈では他人が選んだ人物に票を入れる権利とされ、高く称揚されている。これを怠ると、「民主主義の敵」という汚名を着せられてしまう。しかし、かれの罪を問うのに妥当な手段はありえない。法的正当性をもつ告訴人がいない。告訴人自身もまた罪者であった場合は世論という法廷での身の置場がないし、告訴人が罪人でなかったとしても、その犯罪によって利益供与を受けているのだから。Aが棄権すればBの票は重要性を増すものなのだ。婦人参政権とは、どこぞの男に言われるままに票を投じるという、女性の権利のことを指す。それは女性の責任能力に基づくものだが、女性の責任能力というものはやや限界がある。自らの権利を高らかに宣言するためにペティコートから飛び出す女性のうち、もっとも熱心なものこそ、鞭で脅かせば一番最初にペティコートの中に閉じこもるのだ。

SYCOPHANT [追従者]

n. 後ろを向けという命令にしたがってみたら蹴り飛ばされた、というようなことがないよう、這いつくばって「偉い人」にアプローチする人。ときに編集者

As the lean leech, its victim found, is pleased
To fix itself upon a part diseased
Till, its black hide distended with bad blood,
It drops to die of surfeit in the mud,
So the base sycophant with joy descries
His neighbor's weak spot and his mouth applies,
Gorges and prospers like the leech, although,
Unlike that reptile, he will not let go.
Gelasma, if it paid you to devote
Your talent to the service of a goat,
Showing by forceful logic that its beard
Is more than Aaron's fit to be revered;
If to the task of honoring its smell
Profit had prompted you, and love as well,
The world would benefit at last by you
And wealthy malefactors weep anew --
Your favor for a moment's space denied
And to the nobler object turned aside.
Is't not enough that thrifty millionaires
Who loot in freight and spoliate in fares,
Or, cursed with consciences that bid them fly
To safer villainies of darker dye,
Forswearing robbery and fain, instead,
To steal (they call it "cornering") our bread
May see you groveling their boots to lick
And begging for the favor of a kick?
Still must you follow to the bitter end
Your sycophantic disposition's trend,
And in your eagerness to please the rich
Hunt hungry sinners to their final ditch?
In Morgan's praise you smite the sounding wire,
And sing hosannas to great Havemeyher!
What's Satan done that him you should eschew?
He too is reeking rich -- deducting you.
SYLLOGISM [三段論法]

n. 論理学の公式。大前提・小前提・矛盾で構成される。「論理」参考のこと。

SYLPH [シルフ]

n. 非物質的でありながら目で見ることができる存在で、煤煙や排気ガスなどの文明的所産による大気汚染が殺人的なものになる前、大気が精霊であったころの存在。シルフは、土に住むノーム、水に住むニンフ、火に住むサラマンダーの同類。ただ、同類たちも今はもうみな不健康な環境の中にある。シルフは、空の鳥と同様に雌雄があるのだけれども特に意味はない、ようだ。というのも、もし子どもを持つのであればもっと手の届かないようなところ、雛が人の目に触れないようなところを住まいとしたであろうから。

SYMBOL [シンボル]

n. 何かを表す、あるいは何かの類型であると見られている「何か」とは違うもの。多くのシンボルは「遺物」――もはや存在しつづける意義を失っているのに、我々にそれを作りたがる性癖が祖先から遺伝しているために存在するものだ。たとえば、追悼碑に刻み込まれた骨壷とか。その骨壷の中には、かつては本当に遺灰が収められていた。我々はそれらを作るのをやめることはできないが、そうせずにはいられない自分たちの無力さを隠すために、別のもっともらしい名前を与えることはできるというわけだ。

SYMBOLIC [象徴的な]

adj. シンボルとしてふさわしい。シンボルの解釈としてふさわしい。

They say 'tis conscience feels compunction;
I hold that that's the stomach's function,
For of the sinner I have noted
That when he's sinned he's somewhat bloated,
Or ill some other ghastly fashion
Within that bowel of compassion.
True, I believe the only sinner
Is he that eats a shabby dinner.
You know how Adam with good reason,
For eating apples out of season,
Was "cursed". But that is all symbolic:
The truth is, Adam had the colic.
G.J.

原文
The Devil's Dictionary (1910)
翻訳者
枯葉
ライセンス
クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス
公開日
2001年7月13日
最終修正日
2012年8月25日
URL
Egoistic Romanticist: http://www1.bbiq.jp/kareha/
特記事項
プロジェクト杉田玄白正式参加テキスト。