悪魔の辞典

原題
The Devil's Dictionary
作者
アンブローズ・ビアス
作者(英語表記)
Ambrose Bierce
翻訳者
枯葉

H

HABEAS CORPUS [人身保護令状]

冤罪によって投獄された人物を出獄させられるかもしれない令状。

正式には、違法な拘禁を防ぐために被拘禁者の出廷を命じる令状のこと。

HABIT [習慣]

n. 自由への手かせ足かせ。

HADES [冥府]

n. 地獄。この世を去った魂の住みか。死人が生きているところ。
 古代人の考えでは、ハデスは我々のヘルと同義ではなかった。古代、多くの立派な人たちも、そのほとんどがハデスに住み、それなりに愉快に暮らしていた。実際、楽園そのものがハデスの一部分だったのだ。もっとも、後にパリへと移されたが。新約聖書の K.J.V. の訳出が進行中だったころ、作業にあたった敬虔な学識者の多数が「Αιδηζ」というギリシャ語をヘルと訳すべきだと主張した。だが、良心的な少数派たちは記録を念入りに調査し、この唾棄すべき単語を見つけ次第抹消した。次の会議でソールズベリー司教は、その記録に目を通しているうち、とつぜん飛びあがりいきりたって言うには「諸君、誰かがここから『ヘル』を消し*てしまった!」と。数年後、この善良な聖職者の死は多くの人々に悼まれた。それは彼が、英語に、重要かつ有用かつ不滅の言いまわしを(神慮のもとに)付け加えたその功績を反映してのものであった。

*raze 'Hell'「ヘルを消す」を、おそらく、raise Hell「バカ騒ぎをする」とかけているのであろう。

HAG [鬼婆]

n. あいにく好きになれない年増女のことで、同時にメンドリとか猫とか呼ばれることもある。老魔女、女妖術師などなどが鬼婆と呼ばれるのは、彼女らの頭を取り囲むように不気味な後光などがあると信じられているためである――鬼婆というのは、その髪の中にときどき見うけられる電気的な光の一般的な名称のことだ。かつては、鬼婆という言葉も非難の言葉ではなかった。ドレイトンは「微笑を絶やさぬ美しき鬼婆」という言いまわしを、シェイクスピアが言う「かわいい女の子」というくらいの意味で使っている。今のところ、みなさんの恋人を鬼婆と呼ぶのはよくない――そのような賛辞は、彼女の孫たちのために予約されている。

HALF [半分]

n. ひょっとしたら山分けしたかもしれないもの、あるいは山分けしたと考えられているものうち、ひとつ。14世紀、神学者たちと哲学者たちの間に激しい議論が戦わされた。全能なるものは1つのものを3等分することができるのか、という問題について。敬虔なアルドロヴィナス神父はロウエン大聖堂で、この問題について断固たる、そして間違いようのないしるしをこの世にあらわしくださいますよう、公然と神に祈った。とくに(もしお許しねがえるならば)あのあつかましい冒涜者、マヌティウス・プロシナスという反対派の体のうえに、と。プロシナスは、しかしながら、毒蛇に噛まれて死ぬというところで勘弁してもらえたのだった。

HALO [光輪]

n. 適切には、天体をとりまく光る輪っか。「かさ」ともいう。しかし、神や聖人の頭を飾っているいくぶん似たところのある現象、 "aureola" や "nimbus" と混同して用いられることも多い。halo はまったくの光学的錯覚であり、虹と同じく、大気中の水分が引き起こすものである。aureola は、司教の法冠とか法皇の額冠と同じく、神聖さにおいて優れていることの証として授けられるものだ。敬虔なペスの芸術家であるスゼッドキンによって描かれた、あの「降臨」という絵では、聖母と御子のみならず、そばで神聖なる飼葉桶から餌を食んでいるロバにまで光輪がついている。そして、彼の恒久の名誉のために言っておくが、慣れないその威厳を、まさに聖者らしい面持ちで受けとめている。

HAND [手]

n. 人間の腕の端についていて、ふつうは他人のポケットの中につっこまれている珍妙な設備。

HANDKERCHIEF [ハンカチ]

n. 小さな四角形の絹、あるいは。顔まわりの卑しい役目にいろいろと使われるが、特に葬式のさい、涙を浮かべていないのを隠すのに実用的。ハンカチは最近の発明であり、我々の祖先はその役割を袖にわりふっていた。シェイクスピアが「オセロ」でハンカチを導入しているのは時代錯誤である。デスデモーナはスカートで鼻をかんだのだ。当代、メアリ・ウォーカー博士*その他の改革主義者が燕尾服のすそでやるように。これは、改革とはときに反動だということのひとつの証拠である。

*Marry Edward Walker [1832-1919] 医者。フェミニスト。南北戦争で活躍し、 Medal of Honor を授与されたアメリカ史上唯一の女性となっている。死ぬまで男装して暮らしていたのだそうな。

HANGMAN [絞首刑執行人]

n. もっとも高潔な威厳と最上級の厳粛さをもつ義務に突き動かされる法に携わる役人。犯罪者を祖先に持つ大衆から代々軽蔑されている。一部の州では、彼の職務はいま電気技術者の手に委ねられている。たとえばニュージャージー州では、電気による死刑制度が最近ととのえられた――辞書編纂者たるわたくしめが知った最初の例であり、みな、ジャージー人を吊るすこと*のご都合主義さかげんに疑問をもっている。

*hanging Jerseymen; hanging Jurymen 「意見がまとまらない陪審員たち」との言葉遊びか?

HAPPINESS [幸福]

n. 他人の不幸をじっくり見つめることで生じる快適な感じ。

HARANGUE [長広舌]

n. 敵の演説。かれは harrangue-outang* として知られる。

harrangue-outang; 語義不明。

HARBOR [港湾]

n. 船が嵐から逃れこんできて、税関の暴威にさらされる場所。

HARMONISTS [調和主義者]

n. プロテスタントの一派だが、いまは滅びている。17世紀の初めにヨーロッパで起こったこの教派は、内部分裂と意見の不一致によりばらばらになってしまったのだった。

HASH [細切れの・乱雑な・ばらばらにする]

x. この単語は定義を持たない――何が hash であるのか誰一人ご存知ないのだ。

HATCHET [手斧]

n. インディアンの間ではトマスホークとして知られるオノ家の若者。

"O bury the hatchet, irascible Red,
For peace is a blessing," the White Man said.
  The Savage concurred, and that weapon interred,
With imposing rites, in the White Man's head.
「斧をうずめよ、赤い人。
平和それこそすばらしい」とは白い人。
蛮人はうなずきうなずき武器をうずめた、
白の脳天(あたま)に堂々と。
John Lukkus
HATRED [憎悪]

n. 他人のほうが優れている場面での適切な感情。

HEAD-MONEY [人頭税]

n. 頭数に応じて課される税金。

In ancient times there lived a king
Whose tax-collectors could not wring
From all his subjects gold enough
To make the royal way less rough.
For pleasure's highway, like the dames
Whose premises adjoin it, claims
Perpetual repairing.So
The tax-collectors in a row
Appeared before the throne to pray
Their master to devise some way
To swell the revenue."So great,"
Said they, "are the demands of state
A tithe of all that we collect
Will scarcely meet them.Pray reflect:
How, if one-tenth we must resign,
Can we exist on t'other nine?"
The monarch asked them in reply:
"Has it occurred to you to try
The advantage of economy?"
"It has," the spokesman said:"we sold
All of our gray garrotes of gold;
With plated-ware we now compress
The necks of those whom we assess.
Plain iron forceps we employ
To mitigate the miser's joy
Who hoards, with greed that never tires,
That which your Majesty requires."
Deep lines of thought were seen to plow
Their way across the royal brow.
"Your state is desperate, no question;
Pray favor me with a suggestion."
"O King of Men," the spokesman said,
"If you'll impose upon each head
A tax, the augmented revenue
We'll cheerfully divide with you."
As flashes of the sun illume
The parted storm-cloud's sullen gloom,
The king smiled grimly."I decree
That it be so -- and, not to be
In generosity outdone,
Declare you, each and every one,
Exempted from the operation
Of this new law of capitation.
But lest the people censure me
Because they're bound and you are free,
'Twere well some clever scheme were laid
By you this poll-tax to evade.
I'll leave you now while you confer
With my most trusted minister."
The monarch from the throne-room walked
And straightway in among them stalked
A silent man, with brow concealed,
Bare-armed -- his gleaming axe revealed!
G.J.
HEARSE [霊柩車]

n. 死のゆりかご。

HEART [心臓]

n. 筋肉式自動血液ポンプ。比喩的には、この重宝な器官は感情の大元であると言われている――まことにみごとな空想ではあるにせよ、すでにほろびた迷信でしかない。いまは、感情は胃に内在しており、胃液の化学作用により食物から導き出されるものだと分かっている。ステーキが感情に転換される精密なプロセス――それが柔らかい(テンダー)かそうでないかは、その肉が切り取られた動物の年齢によるものだ。キャビアサンドイッチが珍妙な妄想に昇華され、そして再び辛辣な警句として出現するという、精密で連続的な段取り。固ゆで卵を宗教的悔恨に、クリームパフェを感受性豊かなため息に転換するすばらしく実用的な手法。これらを根気よく追跡調査してきた M.パスツールは、分かりやすい、説得力のある議論を展開している。(また拙稿「精神的親愛の情と消化作用において解放されるある種の腸内ガスとの本質的同一性 The Essential Identity of the Spiritual Affections and Certain Intestinal Gases Freed in Digestion」p.687 も参照のこと。)たしか、「悪魔の快楽 Delectatio Demonorum」(ジョン・カムデン・ホットン, London, 1873)という学術的な著作では、この感情理論について多大な例証を得ることができるはずだ。さらに詳しく調べてみたい方は、ダム教授の「栄養失調の産物としての愛 Love as a Product of Alimentary Maceration」という有名な論文を参照せよ。

HEAT [熱]

n.

Heat, says Professor Tyndall, is a mode
  Of motion, but I know not how he's proving
His point; but this I know -- hot words bestowed
  With skill will set the human fist a-moving,
And where it stops the stars burn free and wild.
Crede expertum -- I have seen them, child.
  熱とは運動、チンダル教授はそう言っている
私は知らない、証明するにはどうすれば?
でも知っている、燃えるような激しい言葉
巧みに使えば人の拳を動かすことを
拳の動く先、燃えるように飛びかう星々を
  経験者を信じよ――そうだよ子ども、私は見たことがある
Gorton Swope
HEATHEN [未開人]

n. 目に見えるもの、手で触れられるものを崇拝するという愚かさがある無知蒙昧ないきもの。カリフォルニア州大学のホウィッソン教授によると、ヘブライ人は未開人である。

"The Hebrews are heathens!" says Howison. He's
  A Christian philosopher. I'm
A scurril agnostical chap, if you please,
  Addicted too much to the crime
  Of religious discussion in my rhyme.

Though Hebrew and Howison cannot agree
  On a modus vivendi -- not they! --
Yet Heaven has had the designing of me,
  And I haven't been reared in a way
  To joy in the thick of the fray.

For this of my creed is the soul and the gist,
  And the truth of it I aver:
Who differs from me in his faith is an 'ist,
  And 'ite, an 'ie, or an 'er --
  And I'm down upon him or her!

Let Howison urge with perfunctory chin
  Toleration -- that's all very well,
But a roast is "nuts" to his nostril thin,
  And he's running -- I know by the smell --
  A secret and personal Hell!
Bissell Gip
HEAVEN [天国]

n. 悪人があなたに向かってうだうだと自分のことをしゃべろうとしなくなり、善人があなたのつまびらかな自分語りに耳を傾けてくれるところ。

HEBREW [ヘブライ人]

n. ユダヤ人男性。シェブライ人*という、全体としてより上位にある創造物とは区別される。

*これも造語だな。ヘブライを "He-brew" と分解し、その対照として "She-brew" をもってきたのであろう。

HELPMATE [配偶者]

n. 妻、あるいは、づれあい。

"Now, why is yer wife called a helpmate, Pat?"
  Says the priest. "Since the time 'o yer wooin'
She's niver assisted in what ye were at --
  For it's naught ye are ever doin'."

"That's true of yer Riverence," Patrick replies,
  And no sign of contrition envices;
"But, bedad, it's a fact which the word implies,
  For she helps to mate the expinses!"
Marley Wottel
HEMP [麻]

n. その強靭な繊維からえりまきの一種が作られる植物。このえりまきは、戸外での公開演説のあとに巻きつけられ、着用者が冷静に受け入れることがないように風邪をひかないようにしてくれる。

HERMIT [世捨人]

n. 悪徳と愚行のあまり世間に受け入れられないひと。

HERS [彼女のもの]

pron. 彼のもの。

HIBERNATE [冬眠する]

v.i. 冬季をひきこもってやりすごすこと。動物の冬眠についてはいろいろと途方もなく通俗的な考えがまかりとおっている。多くのひとが、熊は一冬ずっと無意識に指をしゃぶりながら冬眠していると信じている。春になって隠れ家から出、影を投げかけるようになるには2度やってみないといけないのだ、と。34世紀前のイギリスでは、ツバメたちが川底の泥の中で球状に身を寄せ合って冬を過ごしているということは何よりも確かな事実だった。どうやらツバメたちはもう、水質汚染のためにこの習慣を捨ててしまったようだが。ソータス・エコビアスは中央アジアで、国ごと人々が冬眠しているのを発見した。一部の調査では、復活節の断食は元々冬眠を装飾したもので、そこへ教会が宗教的意義を与えたものにすぎないのではないか、と報告されている。だがこの意見は、高名な権威であるキップ司祭から精力的な反対を受けた。司祭は、一族の始祖の記憶を打ち消すという栄誉を引きうけたがらなかったのだった。

HIPPOGRIFF [ヒポグリフ*1]

n. 今は絶滅してしまった動物のことで、半分は馬で半分はグリフィン*2。グリフィン自体も合成生物であり、半分はライオンで半分はイーグルである。ということは、ヒポグリフは4分の1イーグルなわけで、つまり金貨にして2ドル50セントなのだ*3動物学の研究は驚異に満ちている。

*1グリフィンと馬の合いの子。無論、伝説上の存在。

*2ライオンの胴体に鷲の頭と翼を持つ、伝説上の存在。

*3イーグル金貨という10ドル貨幣があったわけね。

HISTORIAN [歴史家]

n. 守備範囲の広いゴシップ屋。

HISTORY [歴史]

n. おおよそ間違った説明。扱うのは、おおよそ非重要な出来事。関係者は、おおよそが悪党な支配者であり、あるいはおおよそが馬鹿な軍人。

Of Roman history, great Niebuhr's shown
'Tis nine-tenths lying. Faith, I wish 'twere known,
Ere we accept great Niebuhr as a guide,
Wherein he blundered and how much he lied.
Salder Bupp
HOG [豚]

n. 自身の食欲の普遍性と、我々の食欲を例証するさいの利便性とで、注目に値する鳥。イスラム教徒とユダヤ教徒たちは禁制食のひとつに入れてやるという好意を示していないものの、その美味と美声に敬意は払っている。この家禽が尊敬を集めているのは、主としてその歌声による。フルコーラスをつめこんだカゴは、2人の人間から一度に涙をこぼさせたという逸話をもつほどだ。このきたない鳥の学名は Porcus Rockefelleri という。ロックフェラー氏が豚を発見したわけではないのだが、類似点が揃っているところからかれのものであるとみなされているためだ。

豚→きたない=foul→fowl=鶏という言葉遊び?

HOMOEOPATHIST [類似療法専門家]

n. ユーモアを解する医療関係者。

HOMOEOPATHY [類似療法]

n. 逆症療法とキリスト教科学の中間に位置する医療学派。明らかにキリスト教科学がいちばん優れている。というのも、キリスト教科学は仮病を直せるが、他二者には無理だからだ。

類似療法というのは、患者がかかっている病気の症状とよく似た症状をおこす劇薬を少量ずつ処方するという昔の治療法。逆症療法というのはその反対。で、キリスト教科学というのは、祈りで病気を治療する宗教科学のこと。なんと、訳注の方が辞書と化してしまっているではないか。

HOMICIDE [殺人行為]

n. ある人間が他の人間によって殺されること。「罪深い」「酌量の余地ある」「正当と認められる」「称賛に値する」の四種類があるが、どれにしても殺される人間にとってはたいして役に立たない――この分類は法律屋が役に立てるためにある。

HOMILETICS [説教]

n. 聴衆の霊的欲求、知的受容力、精神状態にあわせて言葉を改変する術。

So skilled the parson was in homiletics
That all his normal purges and emetics
To medicine the spirit were compounded
With a most just discrimination founded
Upon a rigorous examination
Of tongue and pulse and heart and respiration.
Then, having diagnosed each one's condition,
His scriptural specifics this physician
Administered -- his pills so efficacious
And pukes of disposition so vivacious
That souls afflicted with ten kinds of Adam
Were convalescent ere they knew they had 'em.
But Slander's tongue -- itself all coated -- uttered
Her bilious mind and scandalously muttered
That in the case of patients having money
The pills were sugar and the pukes were honey.
Biography of Bishop Potter
HONORABLE [恥を知る・尊敬に値する]

adj. 手の届くところにある障害物に悩まされている。立法府では、どんな議員でも「尊敬に値する」と呼び、敬称に代える習慣がある。たとえば、「かの尊敬に値する紳士は性根の腐った下司であります」とか。

HOPE [希望]

n. 欲望と予想をひとつに巻き上げたもの。

Delicious Hope! when naught to man it left --
Of fortune destitute, of friends bereft;
When even his dog deserts him, and his goat
With tranquil disaffection chews his coat
While yet it hangs upon his back; then thou,
The star far-flaming on thine angel brow,
Descendest, radiant, from the skies to hint
The promise of a clerkship in the Mint.
Fogarty Weffing
HOSPITALITY [もてなし]

n. 食事も宿も必要としていないひとに食事や宿を提供せよと我々を駈りたてる美徳。

HOSTILITY [敵意]

n. 地球の人口過剰を、とりわけ鋭く実用的にとらえた感覚。敵意は能動的敵意と受動的敵意のふたとおりに分類される。たとえば(順に)、女性が女友達に対して抱く感情であり、また、それにもかかわらず同性をもてなそうとする感情のことだ。

HOURI [天女]

n. イスラム教徒の楽園に住む女性。善良なイスラム教徒が陽気に暮らせるようにするためにいるのだが、イスラム教徒が天女の存在を信じているということは、地上での配偶者に気高い不満を抱いているということだ。かれらは配偶者には魂がないと断じている。イスラム教徒の善良な女性からは、天女はあまり尊敬されていないと言われている。

HOUSE [家]

n. 中空の建物。人、ネズミ、昆虫、ごきぶり、はえ、蚊、のみ、バチルス、細菌の住居として建てられる。House of Correction [矯正院] 政治的貢献や個人的貢献に対して報いるための場所。また、法律違反者の身柄や予算を確保するための場所。House of God [教会] 尖塔つきの建物で、そこには抵当がぶらさがっている。House-dog [番犬] 閉鎖的な屋敷に飼われている害獣。通行人を侮辱したり、あつかましい来客を仰天させたりする。House-maid [ハウスメイド] やや若めの雇われ女。神から授けられた任地を、さまざまな意味で不快にし、天才的なほど汚くする。

HOUSELESS [宿なしの]

adj. 家に関する税金をすべて支払ってしまった。

HOVEL [陋屋(ろうおく)]

n. 宮殿という花の果実。

  Twaddle had a hovel,
    Twiddle had a palace;
  Twaddle said: "I'll grovel
    Or he'll think I bear him malice" --
A sentiment as novel
  As a castor on a chalice.

  Down upon the middle
    Of his legs fell Twaddle
  And astonished Mr. Twiddle,
    Who began to lift his noddle.
  Feed upon the fiddle-
    Faddle flummery, unswaddle
A new-born self-sufficiency and think himself a [mockery.]
G.J.
HUMANITY [人類]

n. 集合的に、人間の種族のこと。詩人は類人猿なので除外。

HUMORIST [芸人]

n. ファラオの心臓の収縮機能を弱め、全身全霊をかけてイスラエルの提案を却下させたと思われる疫病。

Lo! the poor humorist, whose tortured mind
See jokes in crowds, though still to gloom inclined --
Whose simple appetite, untaught to stray,
His brains, renewed by night, consumes by day.
He thinks, admitted to an equal sty,
A graceful hog would bear his company.
Alexander Poke
HURRICANE [ハリケーン]

n. 大気中の神秘的なデモンストレーション。かつては非常にさかんだったが、今となっては廃れ、トルネードやサイクロンにとって代わられてしまった。ハリケーンは、いまだ西インド諸国では広く用いられるし、ある種の古風な船長たちにも好まれている。蒸気船の上甲板の構築にあたっても用いられるが、一般的に言って、ハリケーンの有用性はそれより長持ちするものである。

ハリケーンデッキという甲板の形態があるわけね。

HURRY [急ぎ]

n. へたくそどもの仕事のこと。

HUSBAND [夫]

n. 夕食後、皿の始末を命じられるひと。

HYBRID [合いの子]

n. 問題のよどみ。

HYDRA [ヒドラ・連鎖して生じる難問]

n. 古代人が "many heads" に分類した一種の動物。

HYENA [ハイエナ]

n. 東洋諸国の一部では、死体が埋まっている場所に夜中に頻出するという習性から崇拝されているけもの。だが、医学生もやることは同じである。

HYPOCHONDRIASIS [心気症*]

n. 自発的鬱。

*自分が重い病気にかかっているのではないかと過度に心配する神経症のこと。

Some heaps of trash upon a vacant lot
Where long the village rubbish had been shot
Displayed a sign among the stuff and stumps --
"Hypochondriasis." It meant The Dumps.
空き地に積まれたがらくたの山
昔から投げ込まれてきた村のごみ
看板ひとつ、かすかに覗く――「心気症」
意味するところはゴミ捨て場
Bogul S. Purvy
HYPOCRITE [偽善者]

n. 何を欲しているのか外見的にわかるようにするという利益を、尊重してもいない美徳を保つことで確保する人。


原文
"The Devil's Dictionary" (1910)
翻訳者
枯葉
ライセンス
クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス
公開日
2001年7月13日
最終修正日
2003年2月15日
URL
Egoistic Romanticist: http://www1.bbiq.jp/kareha/
特記事項
プロジェクト杉田玄白正式参加テキスト。