読み手のみなさまにお願いがございます。
まず、「悪魔の辞典」がどういう読み物であるか、ご存知ない方のために説明しておきますと、アンブローズ・ビアスというアメリカ人が編纂した私撰辞書で、いろいろな単語についてひねくれた(ときに鋭い)解釈を諧謔や罵倒とともに繰り広げたものです。時代としても、帝国主義の最盛期にあたりますし、社会主義がようやく出現したというところ。婦人参政権も確立されておりませんから、男女平等なんて、ことばとしてすら存在しておりません。ですから、現代からみると「偏向的」だったり「差別的」だったり「科学的にまちがい」だったりする記述が多々ありますが、そこら辺についての苦情をオレにもちこまないでください。
もちろん、例によって誤字とか誤訳とかの指摘は大歓迎しておりますので、なにとぞよろしゅう。
テキストは Project Gutenberg にあるものをベースにしていますが、いかんせん typo が多いので、インターネット上に散見するいろんなテキストも参考にしております。
翻訳上、いくつか作為的にやっちゃったところをお知らせ。
一部の見出し語のつづりが変わった形になっているのを現代の辞書にあるつづりに改めています:CLARIONET -> CLARINET, IN'ARDS -> INNARDS, SCIMETAR -> SCIMITAR。一部の外来語の綴りに特殊記号を使用しています。申し訳ないですが、ブラウザによっては?と表示されてしまうはずです。該当するのは:DEJEUNER, LAOCOON, TABLE D'HOTE。ビアスが品詞をかんちがいしている ZIGZAG については v.t. から v.i. に改めました。MEANDER は原文では n. ですが、定義からすると v.i. のほうがふさわしく思えましたのでこれも改めています。
また見出し語の訳ですが、定義にあう訳語をえらんでおりますので、必ずしも英和辞書的に正しくありません(特に WEAKNESSES なんかは)。
あとはこまかい訳語の話。ingenious 「創意工夫に富んだ」「発明の才能がある」「独創的な」は原則「天才的な」で統一しています。ガッサラスカ・ジェイプ神父を修飾している場合は例外。多少無理のあるところもないとは言えません。the lexicographer は明らかにビアスのことじゃない場合をのぞいて「辞書編纂者たるわたくしめ」で通しています。ass はとりあえず「ロバ」と書いて ASS にリンクをはるという手抜きで逃げました。