n. 法律では、神に対する厳粛なアピール。偽証罪による刑罰をもって良心を拘束すること。
n. 悪人が悪あがきを止めたり、根暗が落ちついたりした状態。あるいはその条件。名声の永世ゴミ捨て場。高望みの冷暗所。野心ある作家が、うぬぼれることなく自分の作品に向かい合い、妬むことなくより優れたものに向かい合う場所。目覚し時計のない寄宿舎。
n. 天文学者が前任者のあてずっぽうをひねくりまわす場所。
pp. 邪悪な霊魂に苦しめられている、ゲラサの豚*や他の批評家のように。かつて、悪魔憑きは今よりも一般的なものであった。アラタスは云う。とある百姓の話だが、何でも毎日違う悪魔にとりつかれ、しかも日曜日には2体にとりつかれていたのだそうな。悪魔たちは、1体だけのときは、常に百姓の影を歩いていたので頻繁に目撃された。だが、やがて連中は村の公証人である聖者に追い払われた。ところが、悪魔たちはその百姓も一緒につれていってしまったらしく、百姓は完全に姿を消してしまった。また、リームズの大司教がとある女性から追い出した悪魔は、百人の人々に追いかけられながら、森を走りぬけ、開けた土地に到達すると、教会の尖塔よりも高く飛びあがって鳥のように逃げさった。また、クロムウェル軍の従軍牧師が、兵士に取りついた悪魔を落とすためにその兵士を水中に放りこむと、悪魔が水面に浮かび上がった。その兵士は、不幸なことに、浮かんでこなかった。
*「マタイによる福音書」8:28-8:34、「ルカによる福音書」8:27-8:34、「マルコによる福音書」3:1-3:14。電網聖書参照のこと。
abj. もはや臆病者に使われることがない。主として言葉を指しながら言う。どこぞの辞書編纂者が「廃れた」と印した言葉は、それ以後、馬鹿な作家の恐怖と嫌悪の的となるが、もしその言葉が良質な言葉であり、かつ、その良さに匹敵する同義の新語がないのであれば、良質な作家にとっては十分に良質な単語である。実のところ、「廃」語にたいするもの書きの態度は、かれらの作品の性質を除けば、その文学的才能を計る何よりも正確な目安になる。もし廃語と準廃語を集めた辞書があったとしたら、それは言語の強靭で甘美な部分に満ち満ちているだけでなく、あらゆる有能な書き手(優秀な読み手とはかぎらない)の語彙をおおいに補強してくれたであろうものを。
adj. 我々が支持しているという圧力と絢爛さにおいて明白となった真実に近づきえない。
頑固さを象徴する典型的な例としては、ラバ(アメリカ民主党のこと)というもっとも知的な動物があげられる。
adj. 頻度の差はあるものの我々を苦しめる。とはいえ、"occasional verses" という形で用いられる場合は意味が違う。こちらは、たとえば記念日とか祝祭とかのイベント、つまり時節(occasion)に応じて書かれる韻詩(verses)のことである。なるほど、他の詩と比べれば悩まされる程度がやや軽いものではあるが、でたらめに再発する点で名前に反している。
n. 東洋の西(または東)に広がっている世界の一部分。居住するのは主としてキリスト教徒、つまり偽善者という有力な劣等民族であり、主要産業は人殺しと詐欺だが、連中はそれぞれ「戦争」「商業」と呼ぶのを好む。これらはまた、東洋の主要産業でもある。
n. 人間が支配するこの世界の2/3を占める水の集合体。――人間にはえらがないのだが。
adj. 肯定しがたい感情、感覚を生み出している。たとえば、敵に向かって前進する軍隊のように。
「敵の戦術がオフェンシブであったというのか?」と王は問う。
「そうとしか言いようがありません!」としくじった将軍が答えた。「あの悪党め、出てきて勝負しようとしなかったのであります!」
adj. 一般の能率性と矛盾する有用な段階にある。例:古老。時の経過と大衆嗜好の変化によって評判を落とした。例:古書。
Harley Shum"Old books? The devil take them!" Goby said. "Fresh every day must be my books and bread." Nature herself approves the Goby rule And gives us every moment a fresh fool.
adj. 油のような、(口先が)なめらかな。
ディズレーリ*1は昔、ウィルバーフォース司教*2の態度を「脂のようで(脂のようになめらかな態度で)、油のようで(油をさしたように口先がうまく)、石鹸のようだ(石鹸のようにつかみ所がない)」と評したことがあった。以後、この高貴な聖職者はソーピー・サムとして知られるようになった。人間にはそれぞれぴったりと当てはまるような表現があるものだ。敵はそれを見つさえすればよい。
*1 Benjamin Disraeli [1804-81] イギリス首相、小説家。
*2 Sammuel Wilberforce [1805-73] Oxford Movement という復古的な宗教改革運動のさい、どっちつかずの態度をとった。
adj. テッサリア山に関する。この山は、かつては神々の住居だったが、いまや、観光客の存在とその食欲を証明する、黄ばんだ新聞紙・ビール瓶・空のイワシ缶の倉庫である。
Averil JoopHis name the smirking tourist scrawls Upon Minerva's temple walls, Where thundered once Olympian Zeus, And marks his appetite's abuse.
n. 何かが起きるだろうというサイン。もし何も起きていなければの話だが。
adv. 十分に。
n. 異なる世界での生活を描写する芝居。この世界の住民は、喋る代わりに歌い、モーションの代わりにジェスチャーを使い、気取って身がまえる代わりに気取って心がまえる。ここでの行動はすべてシミュレーションであり、「シミュレーション」という言葉は simia つまり「猿」からきている。しかしオペラでは、俳優はそのモデルを Simia audibilis(あるいは Pithecanthropos stentor)――すなわち「遠吠えする猿」にとっている。
The actor apes a man -- at least in shape; The opera performer apes and ape.俳優は人間を猿真似する――すくなくとも形の上では 一方オペラの俳優は猿を猿真似する
n. アイデンティティーという牢獄内にある鍵のかかっていないドア。処刑場に通じている。
n. 好都合なとき。ここで手を伸ばせば落胆をつかみとることが可能。
n. 障害や難点を指摘することでアシストすること。
Percy P. OrminderHow lonely he who thinks to vex With bandinage the Solemn Sex! Of levity, Mere Man, beware; None but the Grave deserve the Unfair.
n. 政治では、政府与党が乱暴狼藉を働くのを阻止するために、政府与党を骨抜きにする政党。
政府の機能について海外留学をしてきたガーガルー国王、臣民の中からもっとも太った者100人を選び出し、国税徴収法案を作るための議会の議員に任命した。うち、40人は「反対の党(Party of Opposition)」つまり野党に組み入れられ、首相自らていねいにあらゆる欽定議案に反対せよという職務を教えこんだ。ところが、最初の議案は満場一致で可決されてしまった。これにたいそう機嫌を損ねた国王、拒否権を行使し、もう一度同じことをやったらその頑固さに報いて首を刎ねると野党に通告した。これを受けて、40人全員が切腹してしまった。
「どうすればよかろう?」と国王が問う。「自由主義政府は野党なしでは運営できぬぞ」
「宇宙の輝きたる陛下」と首相が答えた。「なるほど、あの蒙昧な者どもはもはや信任状をもっておりませんが、すべてが失われたわけではありませぬ。この問題、ひとつこの老骨にお任せあれ」
というわけで、首相は陛下の野党議員に藁をつめて防腐処置をし、無理やり座席に押しこんで釘で打ちつけた。あらゆる議題に40票の反対票が記録され、国は栄えた。だがある日、いぼに税金を課そうという法案は否決された――与党議員は座席に釘づけされていなかったのだ! これにたいそう憤激した国王、首相に死を賜い、議会は砲兵一個中隊によって解散させられた。こうしてガーガルーからは、人民への、人民による、人民のための統治*は消滅したのであった。
*Abraham Lincoln [1809-0865] の「ゲティスバーグ演説」より。岡田晃久+山形浩生訳参照のこと。
n. 主義、というか信念。そのこころは、あらゆるものは美しい、醜いものも含んで。あらゆるものは善良だ、特に悪人は。そのうえ、すべてが正しいと誤る。困窮に陥ることに著しく慣れている人々が著しい頑なさで奉じており、猿のような薄ら笑いを浮かべながら著しく無難に論じてみせる。盲信の一種であるから、反論という光明を寄せつけない――知性の混乱であり、死ぬまで手の施しようがない。遺伝性を持つが、幸いにも、伝染性はない。
n. 黒とは白であるという主義の擁護者。
ある悲観論者が神に救済を求めた。
「なるほど、おまえの生きる希望と気力を癒して欲しいのだな」と神は言った。
「いいえ」と嘆願者は答えた。「希望と気力を正当化する何かを作り出して欲しいのです」
「世界にはすべてのものが作られておる」と神。「ただ、おまえは見落としているだけだ――楽天家もまた死すべき運命にあると言うことを」
n. 発言と行動の間をとりもつ謀略のことで、理解力に対する詐術。速記術によって緩和される暴虐行為。
n. 生きているひとだが、死によって親不孝をする権利を奪われている――その不自由さが、人間の本能に眠る同情心に強く訴えてやまない。若い孤児が孤児院に送りこまれると、孤児院は細心の注意を払ってその未発達の忠誠心を育み、身のほどを分からせる。それから、依存と隷属の技が教えこまれ、最終的には、靴磨きや皿洗いとして世間を喰いものとすべく解き放たれるのだ。
n. 通俗的宗教系ジョークを着こなすオックス。
n. 耳ではなくて目で綴れという綴字法。あらゆる精神病院の退院者たちによって、光にかけた熱をこめて主張されている。かれらはチョーサー王の時代から少々の譲歩は認めなければならなかったのだが、それでもやはり、これから譲歩されるべきものを守ることに情熱を傾けている。
A spelling reformer indicted For fudge was before the court cicted. The judge said: "Enough -- His candle we'll snough, And his sepulchre shall not be whicted."
n. 大型の鳥の一種。ただし(罪深きゆえにだ、間違いあるまい)大自然から後ろ向きの爪を授かっていない。そこに多くの博物学者が動植物のデザインが意図的なものであるというはっきりとした証拠を見ている。きちんと機能する両の翼が欠けているのは些細な欠点にすぎない。というのも、これまで天才的にも指摘されてきたように、ダチョウは飛ばないからだ。
adv. ベターなわけではないけれど。
n. 落胆の特殊なタイプ。例外の中に規則の証明を見いだすような知性によると、ある行動の英知は成果というか結果で判断されるという。不滅のたわごとである。行動の英知とは、行動者が実行のさいに灯していた光明によって判断されるべきものなのだ。
v.t. 敵をひとり作ること。
n. 政府から税金をとられることのない部分的環境。主として詩人に閃きを与えるのに有用。
Stromboli SmithI climbed to the top of a mountain one day To see the sun setting in glory, And I thought, as I looked at his vanishing ray, Of a perfectly splendid story. 'Twas about an old man and the ass he bestrode Till the strength of the beast was o'ertested; Then the man would carry him miles on the road Till Neddy was pretty well rested. The moon rising solemnly over the crest Of the hills to the east of my station Displayed her broad disk to the darkening west Like a visible new creation. And I thought of a joke (and I laughed till I cried) Of an idle young woman who tarried About a church-door for a look at the bride, Although 'twas herself that was married. To poets all Nature is pregnant with grand Ideas -- with thought and emotion. I pity the dunces who don't understand The speech of earth, heaven and ocean.
n. 古代ギリシャ語では、国家の敵を撃退したひとを称えて行われた形式ばった野外式典。重要性では "triumph" より劣る。現代英語では不適切に使われている単語で、その時間、その場所にいる英雄への敬意を、自然発生的なだらしない形で表現すること。
Dudley Spink"I had an ovation!" the actor man said, But I thought it uncommonly queer, That people and critics by him had been led By the ear. The Latin lexicon makes his absurd Assertion as plain as a peg; In "ovum" we find the true root of the word. It means egg.
v. 正式な食事を採ること。
John BoopHail, Gastronome, Apostle of Excess, Well skilled to overeat without distress! Thy great invention, the unfatal feast, Shows Man's superiority to Beast.
n. 危険な失調状態。釣りに行きたがる政府高官がよく冒される。
v. 借りを作った(そしていまでもある)。かつて、この単語は正式には負債を意味するものではなく、所有を意味するものだった。つまり "own" だ。そしていまだ債務者の頭の中に、負債と資産との豪快な勘違いを生み出している。
n. ねばねばどろどろした貝、人が文明から与えられた豪胆さゆえにはらわたをとらずに食べるようになった貝! 殻は貧乏人に与えられることもある。